ふたば救急総合医療支援センターの応援医師として、これまで、広島大学大学院分子内科学(内科学第二)内分泌・糖尿病内科 から、一町澄宜先生、佐川淳司先生、児玉尭也先生とお越しいただきました。児玉先生のレポートをご紹介します。
S__53329933
島袋、児玉尭也先生
****************************************************************************
広島大学病院 内分泌・糖尿病内科所属の児玉尭也と申します。復興支援の一環で、2016年より、広島大学病院から福島県立医科大学附属病院へ内科医の派遣を行なっております。今回、ご縁を賜り、2020年4月から6月末まで、私が出向させていただきました。同院の糖尿病・内分泌代謝内科にて勉強させていただきながら、ふたば救急総合医療支援センターに所属し、福島県双葉郡富岡町にある「ふたば医療センター附属病院(以下、ふたば医療センター、と記載します。)」に勤務させていただきました。今回は、ふたば医療センターでの勤務についてご報告させて頂きます。
図1
写真①:ふたば医療センター正面玄関

ふたば医療センターは、双葉地域の2次救急医療の拠点として2018年4月に開院された、新しい病院です。福島県立医大が全面的に支援しており、地域の救急医療のニーズを満たすべく努めています。病床は30床と少なめですが、救急車入り口から、初療室、CT室と導線よく配置され、一般的な診断・治療に必要な機器が揃っています。近隣の高次医療機関は、救急車でも1時間以上かかるため、重症患者の初療を行うこともあります。
図2
写真②:救急外来。十分な広さがあり、初療用の器具が準備されている。

当地域の問題点の一つとして、前述のように高次医療機関への距離があります。ふたば医療センターでは多目的ヘリを配置し、日中・晴天時のみの運用ではありますが、高次医療機関へ短時間で患者を搬送することができます。当院にて、急患の診断・初療を行い、必要時は、迅速に高次医療機関へ搬送するという運用ができています。救急医療中心の医院ですので、継続的な外来治療は地域の病院にご協力頂いています。そのため地域の医院からの急患紹介には、迅速に対応しています。

入院患者は主に救急外来を経て入院する軽症〜中等症患者で、ほとんどが当院で入院治療を完結しますが、重症への進行例では高次医療機関への転院搬送も同様に行なっています。
図3
写真③:多目的ヘリ

医師は、常勤医師、非常勤内科・外科医師が数名ずつおり、各々垣根低く意見交換し、病棟・救急外来の対応も流動的に行い、各医師の専門分野を活かしながら入院患者・救急患者の診療を行なっています。

双葉郡の特徴の一つとして、地域の特色が刻々と変わっていく点があります。原発関係に限らず、様々な業種の方が多く集まっているため、就労世代の救患対応が重要である一方、元々は高齢者の多い地域でもありました。帰宅困難地域の解除に伴い、徐々にですが地元の方が戻ってこられ、それに伴い病院受診が必要な高齢者人口が増えてきており、今後もこの傾向は続くと思われます。そのため、病院に求められる役割も変化していき、訪問看護や、高齢者地域医療として求められる入院治療も行い、各機能の拡充に努めています。

私が赴任してきた4月は、コロナウィルス 感染症に対応できる診療体制の確立が急務でした。十分な感染防御下で診察が行える診察室の新規設置、ドライブスルー形式の運用を迅速に開始され、また福島医科大学病院の感染制御部の協力を得ながら、検査・入院時の安全な導線を設定されていました。短い準備期間の中で実施されており、当院の情報収集や対応の柔軟さに驚きました。震災や原発事故を通し、不測の事態に対応を続けた福島県の医療の経験値を感じました。
図4
写真④:感染防御のため、病棟外に新規設置された診察室

このように、地域医療の拠点の一つとして、柔軟な機能が求められる病院でした。そのため当初は非常に緊張し勤務していましたが、他の先生方やコメディカルの方々と助け合いながら乗り越えていく事ができました。自身も双葉地域の医療に貢献できるという充足感も持ち、様々な経験が得られ、非常に有意義な出向でした。
今回の出向は、様々な職種の方々のご尽力の賜物ですので、この場で改めて感謝を申し上げます。広島と福島と遠方ではありますが、このご縁が続きますよう、よろしくお願いいたします。

(2000年7月8日記)